ブッダの10の肩書き

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ネパールのブッダ

肩書きがなくとも魅力ある人間になりたいということを前回書きました。

ところがブッダにも肩書きがあったのです。しかも10もの肩書です。しかしそれはどこどこの組織や団体の長だとかというようなつまらないものではなく、ブッダの真の徳から人々が感じ得てそれを表すために付けられたものでした。

「如来の十号(にょらいのじゅうごう)」といってブッダには十の呼び名があるのです。

そもそもブッダとは「覚者」即ち悟りに至った者という意味ですから、正確にいうとブッダ自身の本名ではありません。本名はゴータマ・シッダールタ(シッダッタともいう)といいます。ゴータマが姓でシッダールタが名です。はじめゴータマ・ブッダと呼ばれていましたが、いつの間にかゴータマがとれてブッダと呼ばれています。

ブッダの十の呼び名とは…

1、如来(にょらい=真実に至りそこから来る者を如去如来といい、如来と略された)

2、応供(おうぐ=供養を受けるに相応しい人)

3、正偏知(しょうへんち=宇宙の現象を正しく知る人)

4、明行足(みょうぎょうそく=正しい智慧をもち、それを行なう人)

5、善逝(ぜんぜい=迷いの此岸から悟りの彼岸に善く逝って還らぬ人)

6、世間解(せけんげ=世間のことがよく解っている人)

7、無上士(むじょうし=この上もない人)

8、調御丈夫(ぢょうごじょうぶ=人々を上手に導ける人)

9、天人師(てんにんし=帝釈天などの神々や我々人間の師となる人)

10、仏(ぶつ=真理に目覚めた人)

11、世尊(せそん=世において最も尊い人)

…あれっ?11ありますね。でも安心してください。「如来の十号」だから如来は数に入らず10の呼び名でいいのです…。まあ、諸説ありますが、それでいいのです。

これが仏教経典に出てくるブッダの10の呼び名です。肩書きなんかじゃありませんね。

この10の呼び名が、ある経典中ではブッダを指す時必ず出てきます。ですからブッダの名が現れる度にこの10の名を言わなくてはなりません。とても長い名前になりますね。

話はそれますが、米国ハワイ州の州魚の名は「フムフムヌクヌクアプアア」といいます。この魚は決して捕まえることができないそうです。何故なら名前が長すぎて、その名前を呼んでいるうちに逃げてしまうからだそうです。

冗談はさておき、このブッダが10の呼び名を持つというようなことは、私たちの現代社会でも実際にあることです。例えば歴史上有名な剣術家の柳生但馬守宗矩(やぎゅうたじまのかみむねのり)とか、江戸町奉行の大岡越前守忠相(おおおかえちぜんのかみただすけ)など、またブラジルやペルーでは父方母方の姓、さらには祖父母の姓を二つも三つもくっ付けてとても長い名前がみられます。例えばボサノバの創始者の一人として有名なブラジルのアントニオ・カルロス・ジョビンの本名はアントニオ・カルロス・ブラジレイロ・ジ・アウメイダ・ジョビンというのだそうです。大体その名前を見ればどこの人だとか、どこの出身だとか、あんな仕事なのか、とかがわかるものです。

私たちもせっかくこの命をいただき今生を生きているのですから、思い切っていろいろな呼び名を自分自身につけて見るのも面白いですね。名は体を表すともいいますので。

例えば私だったら、私の姓は今井と申しますので、今井超破戒・怠け者・優柔不断・大酒飲み・無責任・メタボリック・真行なんてのはちょっと困りますね。ですから何とかせいぜい今井やや破戒・まあ働き者・柔軟・酒ほどほど・楽天家・中肉中背・真行くらいにしたいものです。

名前を人生の鑑(かがみ)とし、より素晴らしい呼び名に近づいていけるよういろいろなことに打ち込んでいくなんていうのも楽しい人生の生き方かも知れません。