選挙、選挙、そして選挙

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統一地方選挙なるものが始まり、私の住む所でも選挙カーが引っ切り無しに来襲しうんざりしています。なんせこの度は市議会議員選挙ですから、市長選などと違って候補者の数が多い、その分やって来る選挙カーも多いわけです。

どうしてうんざりしているかと言うと、私には選挙権が無いからです。とっくに海外移住に向けて住民票を抜いてしまいました。入れておくと市民税、県民税、健康保険税、国民年金保険料等大変多くの税金を払わねばなりません。何しろ今はここに一年の半分ほどしか住んでおらず、家族はとっくに海外移住してしまったものですからそのような税金は払いたくありません。

住民票を抜いて、しめしめこれで税金を請求される事はないと思いきや、督促状の嵐です。住民票はないと市役所の課税課に抗議したら、今年の税金は去年の所得に対してかかっているとのこと、無視していたら、ある日私の預金口座から強制的に差し押さえられました…。市役所に電話をかけて「あんたらヤクザか!?」と文句を言おうとも思いましたが、妙にスッキリした気分になったのでやめました。

話を選挙に戻します。

周知の通り日本では公正な選挙が行われています。しかしながら全世界規模で見てみると、未だ公正な選挙が世界中で行われているとはとても言えない状況です。

ある時、移住先のマレーシアで総選挙が行われました。日本と違って選挙カーは来ませんでした。その代わりそこいら中で大規模なパーティーが催され、多くの人々が食えや歌えや踊れや(マレーシアでは国教がイスラム教なのであまりお酒は飲みません。)と大騒ぎをしていました。後日話を聞くと、パーティーに参加した人々はご馳走になった帰りに署名し、ICナンバーという全国民が一人一人持つ番号をパーティーの主催者(勿論選挙の候補者)に差し上げる、つまり日本で言えば個々の投票用紙を差し出すのだそうです。当然パーティー中に現金が配られた事は察しができます。候補者はバングラデシュからの出稼ぎ労働者にそのICナンバーを与え、投票させるのです。それも一人に2〜3回投票させたりするものですから、訳のわかっていないバングラデシュ人などはマスコミの取材に対して、一度投票すると手の指に黒インクを投票所の職員がつけるのですが、それが二つも三つもついた手をカメラの前で笑顔で振って見せているのです。選挙前にバングラデシュから何万人もの労働者を連れて来たなどというニュースも聞きました。

そのような選挙違反がある意味堂々と行われていました。そう、あの悪名高きナジブ前首相の選挙の時でした。ナジブさんは国の発展のためと言って国民から集めた大金を水のように使い込んで、文句をいう人々を監獄にぶち込んでいたような人でした。政治家として師匠に当たるマハティールさんまでも牢屋に入れました。流石にこれではいけないと思った多くのマレーシア人の期待に反し、そのような堂々とした選挙違反によって再選されました。

そこでごうを煮やした元首相のマハティールさんが、自らの政党に反旗を翻しナジブさんを首相の座から引きづり降ろすため、旧政敵達とも手を組んで立ち上がりました。

昨年5月上旬でしたか、丁度その時マレーシアの首都クアラルンプールから高速道路で自宅のあるペナンまで向かっていた時の事です。なんとその次の日が総選挙の投票日、今までにない数のマレーシア人、マレー人も華人もインド人も一致団結して投票しようと帰宅の途についたものですから、高速道路は大渋滞。いつもなら5時間くらいで着くところが12時間かかってやっとペナンの自宅に戻れました。今回はパーティーに呼ばれても簡単にナンバーは渡さなかったようです。ついにマハティールさんは首相に返りざき、国民は大歓声でした。私も、勿論選挙権はありませんでしたが、国の為に団結したマレーシア人の様子を目の当たりにし、胸に熱いものがこみ上げて来るような感動に浸ったものです。これを機にマレーシアにおける選挙もある意味公正な選挙に近づいたものと思われます。

考えてみればまだまだアジアにおいても公正な選挙が行われている国や地域は数える程です。日本人としては想像もつかないでしょうが、それが事実なのです。公正な選挙が行われているのは日本、韓国、台湾、香港の特別行政区、シンガポールくらいではないでしょうか。あとの国々では残念ながら選挙違反は当たり前みたいな風潮が否めません。日本でも私が子供の頃、選挙の度に現金入りの封筒を配りに来る人がいたのを覚えています。日本ですら何十年か前はそのようだったのですから、発展途上の国々ではまだまだなのは無理もありません。

現在インドネシアとインドで大統領選挙と総選挙がそれぞれ行われています。実情を知っていると、いろいろなニュースを聞いている中で、「何ウソ言ってやがる」と思うことも多々ありますが、マレーシアで起こったことを思い返してみると、そのような国々でも徐々に、徐々に公正な選挙が行われる未来が近づいているのではないかと、それは昨今の春風をとうとう体に感じたような爽快感をもって感じています。